皆さんは疲れていたり、何となく体調が悪いとすぐ「風邪気味だ」とか「風邪薬飲もう」とか言ってませんか?これって大きな間違いなんです。
そもそも「風邪」というのは、ハナ、ノドから気管にかけて、空気の通り道なので気道といいますが、「気道の炎症」なのです。平たく言えば、気道の粘膜が擦りむけた状態、つまり「気道のケガ」なのです。膝を擦りむいた時のことを思い出して下さい。
さて皆さんはケガをした時にどうしますか?薬をのみますか?薬を飲んでケガが治るでしょうか、治りませんね。そう、傷口には薬を付けたり、絆創膏を貼ったりします。つまりケガをした場所を保護したり、安静にして治るのを待つのです。風邪も全く同じ。擦りむけた「局所」を安静にすることが大事、よく「寝てれば治る」なんて言いますが、寝ててもケガは治りません。 じゃあ具体的にはどうすればいいのか言うと・・・。
まず、ノドの痛みについて。
ノドの痛みにはひたすら「うがい」です。但しヨード系(CMなどで流れている茶色系の薬)はダメ。余計痛くなります。これは消毒薬としては有用ですが、元々粘膜の刺激性が強く、本当はうがいには適しません。ノド痛には「アズレン」というのを使って下さい。そうです、紫とか青っぽいヤツです。市販の喉スプレーも大部分はヨード系です。ご注意を!でもアズレン配合の喉スプレーもちゃんと売っています。うがいはどこでも出来るわけではありません。でも喉スプレーを1個ポケットに入れておけば、どこでも使えます。是非こっちを使ってみて下さい。すぐに痛みが軽くなります。ただしこれは言ってみれば「水の絆創膏」、すぐに取れてしまいます。ですから痛くなったらうがいやスプレーをを繰り返して下さい。もちろんノドへの刺激の強い熱いもの、辛いもの、固いものなどは食べないようにしましょう。
次は鼻水、タンについて。
鼻水やタンというのは「ケガをしたところから滲み出してくる分泌物」です。膝を擦りむくと、少しベタベタした透明な汁が出てきますね。これが鼻水やタンの正体です。だから止めてはダメ!どんどん出すべきです。市販の風邪薬には必ずと言っていいほど、鼻水止めらしき成分が含まれています。いわゆる抗ヒスタミン剤ですが、これは本当はアレルギーに使う薬です。「なんで風邪にアレルギーの薬?」と思いませんか?もっともな疑問です。実は抗ヒスタミン剤の副作用を利用しています。抗ヒスタミン剤の副作用の代表的なものは「眠気」と「鼻、喉の渇き」です。だから「風邪薬を飲むと眠くなる」という事態が起きるのです。そして鼻水の出る人が「鼻、喉の渇く薬」を飲むと、当然鼻水は出なくなります。でもこれは治ったわけではありません。ネバネバ度が強くなって出にくくなっただけなので、実は溜め込んでいる事になります。鼻水は「副鼻腔」というところから出てきます。副鼻腔は骨に囲まれた空間で、脳とは薄い骨で隔てられているだけで、すぐ近くです。「おでこやほっぺたの奥」にあたりますが、こんなところに溜め込んでは大変です。ハナはどんどんかんで出して下さい。タンも同じです。タンは気管や気管支から分泌されます。やはりこれを止めてしまうと、気管支が詰まって肺炎の原因になります。タンもまた出しやすくすることが大切です。
そして一番大事なことは鼻水やタンの「色」に注意して下さい。「膝を擦りむくと透明な汁が出る」と言いましたが、それがだんだん「黄色っぽい色や緑っぽい色」に変わってくることがあります。これは膿です!傷口が化膿している証拠です。鼻水やタンが黄色っぽかったり緑っぽかったりする時も同じ事です。体に、ましてや脳の近くに膿を溜め込んで良い訳がありません。この時点で必要になるのが抗生物質です。抗生物質は言ってみれば消毒薬、細菌をやっつけます。ウィルスには全く効果がありません。ただし悪い菌だけでなく、体内に初めから存在する良い菌まで殺してしまいます。「念のため・・」とかで服用するものではありません。残念なことに「何でもかんでも抗生物質」という先生がおられるのも事実ですが・・。
最後に咳について。大分長くなりましたが、これが最後です。
咳は非常に治りにくく苦しいものです。場合によっては1ヶ月も2ヶ月も続くことがあります。「風邪は治ったけど咳が続く」と言う方もよくおられます。しかし、これは風邪が治ったのではありません。咳は気管が刺激されることででます。元々、気管は非常に敏感です。そこが擦りむけていたらもっと敏感になります。だからチョットした刺激、例えば温度の変化、暖かいところから寒いところへ出た時や逆に寒いところから暖かいところへ入った時など、またはうどんやラーメンの湯気でむせてしまうこともあります。そして一度咳が出ると、その咳がまた気管を刺激して咳が出る。つまり咳が咳を呼んで止まらなくなってしまいます。擦りむけた気管を刺激しているのだから、気管だって治るわけがありませんね。ということは、咳を止めるにはまず「がまん」です。咳をできるだけしないようにしましょう。とは言っても気合いと根性では治りませんから、ここで「咳止め」の出番です。咳止めは咳を止めるための薬ですから、「咳の出る時、出そうな時」に使います。食事は関係ありません。咳止めで「胃が荒れる」なんてことは絶対ありませんから安心して下さい。医者に掛かるとほとんどの場合、1日3回、朝・昼・夕食後などと処方されますが、咳が一番出るのはいつでしょう?多くの場合は夜で、特に横になってからとか明け方とか多いのではないでしょうか。ですから咳止めは、「寝る前と朝は必ず」、そしてあとは咳の出る時に頓服的に使えばよいのです。大事なことは「咳をしない時間をどれだけ長くできるか」です。咳を我慢するのは大変です。苦しいです。でも咳をするのも苦しいです。同じ苦しいなら、早く治る方がいいと思いませんか?
辛い風邪の症状は一日も早く治しましょう!